混乱期 体験談⑤

介護認定”非該当”でも利用できる介護予防サービス

母:80歳 父:他界1年
長男:55歳 既婚 子供無し 一人っ子 東京在住 会社員

昨年父が亡くなり、母が1人になったので、自宅を売却して地方から私の住む東京に転居し、しかも、母親自ら東京にマンションを購入しました。

私は、母が80歳になってから生活環境が変わることを心配しましたが、もともと社交性があったので、東京に引っ越してきても、すぐに近所づきあいが出来るのではないのかとも思いました。

ですが、そのように思い通りにはならず、引っ越した直後は、塞ぎ込み、土地勘も無いことで外出もしていませんでした。

私がつい「認知症になるなよ!」ときつく言ってしまうと、本人もその言葉のせいなのか、「お前には迷惑かけない様にします。」と喧嘩するような会話を続けていました。

しかし、そんなある日に「少し体調がおかしい。言葉が出にくい。」などと、私に言ってきました。すぐに病院へ診察に行きましたが、特に悪い所はありませんでした。

その後、病院からの薦めもあり、介護保険の申請を受けて日中に通える場所を探すことにしました。そして、市役所に申請をしましたが、要介護区分認定は“非該当“と言う結果になりました。

ですので、介護保険サービスでは無く、市で開催をしている介護予防サービスを利用することにし、週1回体操に通い始め、少しずつ地域に馴染むことが出来ていきました。

そんなことをしているうちに1年が過ぎ、今では母親自身で自ら地域との繋がりを持とうという気持ちになり、地域にあるパソコン教室にも通っています。 母親は、私がパソコンに関する内容の質問に答えてくれないので、通う事にしたと言う事ですが、私としては安堵しております。


今回の事例の様に、介護保険制度の申請をしても、非該当と言う認定もあります。

介護保険は、誰でも使えるというわけでは無く、必要な人が使うための社会保障制度です。

自立していると判断された場合は、“一般介護予防事業”と言う総合事業から自治体独自で開催をしている介護予防体操などの利用をおすすめします。

今回は、80歳になってから慣れない土地に引っ越し、地縁関係などが無い状態に生活環境が変わることは、大きなストレスがかかります。また、ご本人が選んで来られた場合でも、子供が呼び寄せる場合とそうでない場合とでは、ストレスの度にも違いが出ます。

親には、親の時間の流れがあり、住み慣れた土地で過ごして生きたい、子供には、親が1人で心配なので呼び寄せたい、こうしたお互いの齟齬は、どの家族でもあります。

こうした齟齬を解消するには、お互いの気持ちを素直に聞き、出来る限りのお互いの環境を尊重していくことが理想なのではないかと思います。

とかく、家族は互いに思いやり、忖度してしまいます。しかし介護では、忖度ばかりしていると、最後の時間に本当の互いの気持ちがわからないまま後悔をしてしまう場合があります。 今回の事例のように「認知症になるなよ」などと、心配だからこそ言ってしまう人も多いかと思います。ですが、介護には終わりがある事を意識して、お互いが元気な時に素直な気持ちも伝える事で、介護が終わった後の後悔を軽減できるのではないのかと思います。