混乱期 体験談③

修繕費の詐欺被害で発覚した母親の認知症

母:75歳 父:5年前に他界
長女:55歳 既婚 子供1人 東京在住 会社員

父の他界後に母は実家で1人暮らしをしていました。父がとても厳格な人だったためか、母は父亡き後に少し自分の時間を満喫しているように見え、私としては安堵していました。

しかし、父が他界してから5年が経過したある日、実家の隣人から電話がかかってきました。「お母さんが、電話をかけて欲しいと来ているのよ。」私としては、何がなんだか理解できない状況でした。

なぜ家に電話があるにも関わらず隣の家から電話をしたのか、と疑問に思っていると母が電話に代わり、「私にお金を貸してくれない?」と言いました。私は益々混乱しました。

とりあえず、再び隣人に電話を代わってもらい、「母の様子がおかしいので、その場にとどめていて欲しい」と頼み、実家に直ぐ帰省する事にしました。

実家に帰省し、母親に電話の件を訪ねると、「お金が無いのよ、家の電話の掛け方が解らなくなって…」と言うのですが、母親を目の前にしても、何が何だか理解が出来ませんでした。

とにかく、通帳を確認する事にしました。そうすると、通帳の残高は残り数千円しかありませんでした。「どうしてこんなに頻繁にお金をおろしたのか?」と確認すると、母は何も答えられませんでした。

とりあえず母を落ち着かせ、その後1人で部屋の中の異変を確認しました。そうすると、机の引き出しの中に修繕会社からの請求書が何通も出てきたのでした。

それは、屋根の工事であったり、白ありの駆除であったり、布団の購入もあったりと、さまざまな請求書がありました。

後で警察官から教えてもらった事ですが、家の玄関には見たことの無いシールが何枚も貼ってあり、これは詐欺グループが一度契約をした家に目印にしていたとのことらしいです。

月一度しか会う事のない私には、とても楽しそうな姿を見せていましたが、それは偽りの姿であり、本当はとても寂しい1人暮らしをしていました。そんな折に、家に来る訪問販売の巧みな話術ややさしさで、その寂しさを紛らわしていたのかと思うと、とてもつらく悲しい気持ちになり、落ち込みました。

その後、1件だけ辛うじてリフォーム会社からの請求に支払い残金があったので、クーリングオフができ、解約することができましたが、この一軒から母はすっかり気落ちしてしまいました。

その後、病院に連れていったところアルツハイマー型認知症の診断を受け、病院から紹介された地域エリアの地域包括支援センターに相談に行き、その後、介護認定で要介護1に認定されました。

今では、週に1回デイサービスへ通い、配食サービスも週に5日間利用しています。週末はなるべく私が帰省し、身の回りの世話をするようにしています。 今でも、もう少し早く母の寂しさを察知出来たらと思うと思うことがあります。


親はたまに子供に会う場合、子供に迷惑をかけまいと思う人が大半です。特にアルツハイマー型認知症の場合はたまに会うだけでは、異変を察知しづらい場合が多いです。

アルツハイマー型認知症は、特に配偶者を亡くした後に発症する場合が多く、一過性のうつ状態になる人も多くいます。

親が言う“大丈夫“という言葉を、そのまま鵜呑みにするのではなく、その言葉の背景にある心配かけまいと想う親心を察し、配慮できると良いです。

しかし、諸事情で寂しさを埋めるための時間を作る事が難しい場合は、電話やメールなどでも良いので、頻繁に連絡を取り、心配しているというアピールすることも有効な手段となります。 母親、父親、配偶者という家族の中の役割を念頭に接するのではなく、1人の人間として接することで、楽しく生きていける環境を整えられるのではないかと思います。